2016.02.05
民法は2016年頃債権関係の法規が様変わりする予定ですが、相続の分野でも、法務省で改正を検討しているようです。改正内容はまだ決まっていませんが、2016年2月2日の日本経済新聞の夕刊に改正が見込まれる部分が報道されました。その中には、遺留分減殺請求を家庭裁判所で完結させることや、自筆証書遺言の方式を緩和するというものもありますが、理念的な改正として、相続開始時における配偶者の居住権の保護、配偶者の貢献に応じた相続分の調整、寄与分の拡張、があります。現行法では、相続人が配偶者と子の場合は、配偶者の法定相続分が2分の1というのは広く知られていると思いますが、2分の1しかないことによって被相続人に先立たれた配偶者が住居を確保できない悲劇が起こったりします。逆に、被相続人が死亡する間際に再婚した場合は、配偶者に2分の1の法定相続分があることについて心情的に納得いかないことが原因の紛争も多いです。それなので、改正事項に挙げられていることはもっともだと思います。ただ、現行法では親族関係から比較的簡単に割り出せた法定相続分が、改正によりわかりにくくなります。それに法定相続分が不条理な場面でも法律だから仕方がないとあきらめられる割合が減りそうです。そうすると、改正になれば、より実情に則した解決が求められ、複雑になりますので、遺産分割の専門性がやや高まるように思えます。
「寄与分」とは被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合はその人の取り分を多くする制度です。制度としては条理にかなっているのですが、現在の裁判実務では寄与分の認定や寄与分の割合は厳格で、十分に機能しているとはいえません。それなので寄与分の拡張という方向性はいいと思います。ただ、物差しで測れるようなものではありませんし、寄与がある人は優遇されていた場合もよくあるので、寄与分をどう認めるかはやはり難しい問題でしょう。寄与に報いることを考えるならやはり遺言が優れています。
山田公之
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所