2020.01.07
令和元年6月20日以降に作成された住民票や住民票の除票は150年保存されることになりました(本投稿時の住民基本台帳法施行令第34条第1項)。政令の改正前の保存期間は5年間だったので、大幅に保存期間が延びました。また、平成26年6月20日以降に作成された住民票や住民票の除票も廃棄前に政令が改正されたので保存期間延長の対象となり得ます。
住民票や除票の保存期間が短いことは、商業登記や不動産登記に記載されている人物と民事の判決書に記載されている人物と連絡が取れなくなるという問題がありました。即ち、登記簿では会社の役員や不動産の権利者については住所が記載されていますが、住所が移転しても登記簿に反映せずに放置されることがままあり、10年、20年と年月が経つと登記簿の住所から住民票をとって生死や現在の住所を調べようとしても、住民票が5年で廃棄されてしまったことで現在の情報に行き着かない問題がおきます。戸籍は既に150年保存になっていますが、登記簿には本籍は記載されないので、いわゆる「所有者に連絡がつかない土地、」「所有者不明の土地」の問題が起きてしまっています。民事裁判の判決書も本籍が記載されないので、10年近く経って強制執行しようとしても相手の住所が調べられないようなことがあります。所有者と連絡がつかない土地について、民事紛争なら、相手方行方不明という扱いで裁判をすることもできなくはありませんが、法的紛争ではなく、公共事業や再開発などで土地の買い上げの交渉をする場合は、相手探しに大変な困難を伴い、相手方が見つからなくて断念せざるを得ないこともあります。これでは、土地の有効活用はできませんし、公共事業で連絡先を探す手間暇には税金が投じられる訳ですから、納税者に余計な負担をかけることになります。
住民票や住民票除票の保存期間が150年になった今後は登記簿等の古い住所の記載でも現在の住所までたどれるようになることが期待でき、所有者不明の土地や古い住所しかわからなくて連絡がつかない問題の解決に役立つと思われます。一方では、税金や強制執行については所在不明により免れることがより難しくなるでしょう。
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所