2018.06.26
最近、民事信託や家族信託の制度が新聞等で特集されるようになり、信託銀行が行う「商事信託」に対する概念として民事信託や家族信託という概念が世間一般に広まっているようです。これらの信託は、後見制度の代替的役割や財産承継・相続対策の手段として期待されていると思われます。当事務所でも相談者の側から「民事信託」や「家族信託」のことが話にでることも珍しくなくなりました。ただ、一般市民向けの解説は、民事信託では、後見よりも融通が利くとか財産承継の道筋を付けやすいという利点に向いていて、法律関係がやや複雑になることや実務の蓄積が少なく将来について不確実要素があるという危うさについては、あまり着目されていないように思われます。必ずしも気軽に扱えるものではないことは知っておいてもらいたいと思います。不確実要素の例としては、遺留分を侵害しそうな信託の設定の問題があります。信託の受益権の価値をどのように評価するかは難問なので遺留分侵害の紛争の解決が困難という懸念があります。また、債務については信託にできません。当事務所では遺言、後見、事業承継等を検討する際には、民事信託や家族信託の利用も検討し、信託の利用が優れていると思われるときは信託の危うさをできるだけ回避しつつ信託の利用をおすすめするようにしています。
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所