2015.06.05
平成27年5月21日の法曹養成制度改革顧問会議で、今後の司法試験の合格者について、「1500人程度」とする方針が報道されました。13年前に掲げた3000人という目標から半分になりましたが、まだ先に合格者数を決めて後から需要を作るという感じがあります。1500人でもまだ弁護士の供給過剰は続きますが、一方で合格者を減らすべきでないという人も根強くいます。「司法試験合格者は減らすべきではない」、という主張の理由としてよくいわれるのが、「弁護士もただの資格だから、資格を取ったことと弁護士業が成功することとは別のこと、社会の弁護士需要よりも弁護士を多くして競争原理を働かせた方がいい」という理由です。このような競争原理は、自動車の運転免許ならなじむのかもしれません。つまり、合格は技能で決まるもので数に制限はありません。免許を取った後、タクシーやトラックの運転手として稼げるかは全く未知数です。しかし、これを医師という資格に当てはめたらどうでしょう。ご承知のとおり医師になるには多めの年数と多大なコストがかかりますが、医師になった後も過当競争で経済的安定が保証されなかったら、優秀な人は集まらないのではないでしょうか。それは医療の質の低下を招くわけで歓迎できるものではありません。
法曹資格(裁判官、検察官、弁護士)を、運転免許寄りに考えるのか、医師寄りに考えるのかによって資格取得後の安定性の考え方は違ってきます。法曹資格取得にかかる年数やコスト(500万円とも1000万円ともいわれる)及び法曹資格の公益的要素を勘案すれば医師寄りに考えるべきなのでしょうが、資格取得後の安定性は弁護士については運転免許寄りになってしまっています。今は弁護士資格をとっても仕事がなくて稼げないから弁護士登録をしない人も少なからずいますが、法科大学院には税金から補助金が支給されていますし、合格者の研修には、国費が使われていますから、ペーパードライバーを養成するために税金が使われていることになります。同じ税金を使うなら不足しているといわれている医師の養成に回せないのでしょうか。競争原理による緊張感の必要性は否定しませんが、司法試験合格者数は需要を合わせるようにして、医学部の定員に近い考え方をしてもいいように思います。
山田滋 山田公之
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所