2014.08.13
民事訴訟等の裁判所の民事手続は、弁護士を代理人にしなくても、成年後見や未成年者でなければ本人(会社なら代表権ある役員)だけでできます。当事者に弁護士のような専門職の代理人が付いていないような訴訟を、「本人訴訟」と呼んでいます。地方裁判所は訴額140万円以下の少額事件を除いた訴訟事件を扱いますが、原告又は被告のどちらか一方、あるいは双方に専門職の代理人が付かないという本人訴訟の割合は70%くらいだそうです。
本人訴訟になる原因は大きく分けると3つあります。1つ目は、弁護士を頼みたいが弁護士費用がない、2つ目は、採算が悪いとか成果が見込めないということで弁護士から断られた、3つ目は、弁護士は引き受けてくれるが、自分でやりたい、というものです。
近年、法テラス(日本司法支援センター)ができて法律扶助制度が利用しやすくなりお金がない人でも、成果が見込める事件は弁護士費用を立て替えてくれるため、1つ目の事例はかなり減っている感じがします。2つ目は費用対効果の問題で今後も消滅することはないでしょうが、弁護士が激増したことにより、報酬が低額化したり着手金目当てで勝算がない事件でも受任するような弁護士もでてきたためやはり本人訴訟は減少傾向にあります。それゆえ、最近の本人訴訟は、「自分でやりたい」から本人訴訟でやっているという割合が多いといえます。一部には高い費用をかけて弁護士を依頼しなくても自分でできると主張しそのような趣旨の本もありますが、訴訟の現場をみていると生兵法は怪我の基というような事例が結構あります。当事務所で扱った案件でも、1000万円とれればまずまずという訴訟で、相手が弁護士をつけず、和解もせず最高裁まで争ったために思いがけず1500万円とれたという事件がありました。本人訴訟にありがちな弱点は、「主張と立証が区別できない」、「自分は正しいのだから裁判所がよき取りはからってくれると思っている」というものがあります。しかし、裁判所は、中立を保たなければなりませんし、手続以外は私的自治を尊重しますので介入は抑制的にしかしません。
当事務所では、本人訴訟を否定するわけではありません。大事なのは使い分けです。相談いただいて、採算や難易度の観点から本人訴訟をお勧めする場合もあります。「弁護士を頼んだが簡単な事件だったので頼まなくても同じような成果が出せた」、「弁護士を頼んだが成果よりも弁護士費用の方が多くなってしまった。」という不満をもたれたのでは、事務所としても気分がよくありません。そして、代理人としてではなく、裁判中の継続相談や書面の代書というお手伝いの仕方を提案することもあります。 事件の難易度が高かったり事件が重大であれば早期に弁護士に依頼することをお勧めするようにしています。弁護士費用については、事件の複雑度、責任の軽重、成果の大小、等の要素を勘案し合理的に算出するよう努めています。
弁護士費用も掛け所が大事で、弁護士と一般の方との感覚が違うことも多いです。早めの相談によってそのギャップは縮められるでしょう。
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所