2016.10.20
H28.10.20
遺産の預金を相続人間の遺産分割協議を経ずに法定相続分の割合で預金を下ろせるかについて、10月19日に最高裁が口頭弁論を開いて審議したというニュースが結構手広く報じられました。この問題については2004年(平成16年)4月20日の最高裁判決で遺産分割不要という判断がでましたので、裁判実務ではこの判断にならっていました。ところが、10月19日に大法廷で口頭弁論を開いたということは重大案件でかつ、従前の最高裁判例を変更されるだろうということを示しています。年末か来年初頭にでるであろう最高裁判決は法律の専門家の関心度が高いことはもちろんですが、相続一般への影響も大きいでしょう。生前贈与を受けた相続人がいる場合、遺産分割において、生前贈与を含めて遺産分割協議をするのが公平であるところ、各自が預金を引き出せてしまうと生前贈与による調整ができないという問題に焦点があたっています。この点はもっともであり、判例変更の流れは是認できますが、一方では、遺産分割協議が長期間まとまらないために預金のロックが解除されないとその間の葬儀費用やその他の相続債務の支払に困窮したり、被相続人と生計を共にしていた遺族の生活費が困窮してしまうという問題があります。最高裁が真逆といえるほどの方針転換するかまではわかりませんが、遺産の預金は引き出しにくい方向に変わりますので、今後は、早期の金銭取得のために遺言や受取人指定の保険で備える必要性が増すでしょう。 山田公之
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所