2016.07.06
本日の朝日新聞の朝刊等に法務省が相続情報証明を発行する制度を創設し、平成29年5月に実施するという内容の記事がありました。この制度は相続手続に携わる専門家にとっては関心度が高いです。
相続によって不動産の名義変更をしたり、預金を解約するような場合は、相続人が誰かを証明するために、被相続人や相続人の戸籍を集めて法務局などの役所に提出又は提示しなければなりません。20年も30年も相続手続きが放置されている場合や、被相続人の戸籍歴が複雑な場合は、集める戸籍の分量が多くなり相続人の確認作業に手間がかかりがちです。相続手続きの過程で一度はきちんと相続人の確認作業をしなければなりませんが、名義変更を受け付ける役所ごとに戸籍を提出又は提示したり、相続人の確認作業をしてもらうのは、煩雑だと感じていました。新制度が導入されれば、名義変更を申請する側が一度正確な相続関係図を作って、法務局に正確な相続関係図であることを証明してもらえば、他の名義変更窓口では相続関係を戸籍でなく相続関係図で証明すればよいことになります。相続人の確認作業が簡素化されれば、作業効率がよくなり、公費や手続き費用の削減につながります。
弁護士としては、法務局の証明がついて相続関係図が、裁判所への申立てでも使えるかが気になります。現在は、遺産分割、遺留分減殺、遺言書検認といった申立ては、被相続人の生まれてから死亡するまでの戸籍と相続人の戸籍を提出しなければなりませんので、この提出が不要になるのは基本的には好ましいことです。ただ、慎重な裁判所が今回の簡素化に賛同するかはまだ未知数です。
山田公之
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所