2016.03.25
現行の民法第951条には「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とする。」と規定されています。私が学生時代初めてこの条文に接した時は、「相続は人の死亡に関わる事象なのに会社のような『法人』になるとはどういうこと???」といった疑問がわきました。
しかしながら、この規定はちゃんと存在意義がありますし、相続財産法人が成立することは決して珍しいことではありません。典型的な事案は、遺産もあるが、債務の方が多い、といった遺産が債務超過の場合です。この場合は、被相続人の配偶者、子供、親兄弟が全員相続放棄をして相続人がいなくなることがよくあります。こういう場合に、遺産は誰の所有なのか、相続債務の債務者は誰なのか、が決められなくなってしまうので、相続財産法人が遺産や債務についての権利義務の主体になるのです。ただ、法人といっても人の結合体ではありません。財団法人の一種といえるでしょう。相続財産法人については裁判所が相続財産管理人を選任して、その管理人が会社の代表取締役や財団法人の理事長のように、相続財産についての管理や意思決定をすることになります。相続財産法人は新規の活動を予定していないので、相続財産管理人が清算業務を行い、消滅に向かうことになります。
山田公之
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所