2018.03.14
債務の履行について当事者間で決着が付かない場合は、通常は、債権者が原告となり、債務者を被告として訴える形になります。しかし、まれに、被告と原告が逆になる訴訟類型があります。それが債務不存在確認訴訟です。通常は、債務者から金銭などの給付を求めたい債権者が自分の権利の正当性と強制執行できる権限を取得するために原告として債務者を訴えますが、債権者の中には、強硬かつ執拗に請求はするものの訴訟を提起しようとしない人がいます。自分から手間と費用をかけて訴訟を起すことが面倒だと考えたり、不当な要求を受け入れさせるためには裁判所を使うと不都合だと考えたりする場合に起こりえます。そういう場合、債務者や債務者と言われている人は、早期解決や不当な要求からの解放を望んで自分の側から訴訟を起すことができます。
債務者側からも訴訟できるとはいえ、やはり訴訟の手間と費用をかけなければなりませんし、債権者が訴えないまま放っておけば時効で消滅するかもしれないのにです。それに、債権者側が「被告」という呼び名になってしまい債権者側の感情を害すこともあるので、債務不存在確認訴訟を提起するのは、早期解決や不当な要求からの解放のためにやむを得ない場合に限定されることになるでしょう。近時は示談屋のような者が介在した不当要求も減っていますし、交通事故で加害者側の保険会社がこの訴訟を推進することも珍しい状態ですから、この訴訟を提起する機会はかなり少なくなっています。
投稿者:弁護士法人しんらい法律事務所